2月14日は あまさひかえめ

プロ野球では昨年、ソフトバンクが劇的な優勝・日本一を果たし日本中は熱気に包まれました。しかし、2月のキャンプインでその栄光は白紙に戻され、また0からのスタートです。
それは我らホトケにとっても同じ。リーグ連覇、トーナメントを優勝し、歓喜の中にいたあの頃はもはや遠い昔の話。
今はただの非リア充軍団と化しました。


申し遅れました私、ドイです。


特にこの時期は僕にとって受難の日々です。
なんてったって僕の大好物であるチョコレートが異常に買いづらいんですから。
チョコ売り場は女子で賑わって、男一人で入っていける隙間なんてありゃあしません。


どうせあのカップルも幸せなバレンタインを迎えるんだろう。
これが赤の他人だったら、心の広い僕は笑って見過ごすことができます。


しかし、苦楽を共にし、一年間戦ってきたホトケの仲間たちの中には、こともあろうにイケメン担当のボクを差し置いてチョコをもらっている奴らがいる。
それが許せないのです。
そんなことを思いながら2月13日の夜は眠りにつきました。


だからでしょうか、こんな夢を見たのは・・・







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







ミツイ(×)「シャク(○)よ、お前だけはオレの味方やと思っていたけどな。俺から教わった帝王学の大前提を破るとは・・。次期キャプテンはカシワギ(×)にする。」

シャク(○)「何言ってんすか。もう年は変わったんです、今は2012年。これからはオレ(○)の時代なんです。古株は引っ込んどいてくださいよ。」

カシワギ(×)「てめー、こともあろうに我らが頭首ミツイ(×)さんに逆らう気か!ふざけんじゃねぇ!」


ホームグラウンド御所で、熾烈な口論を繰り広げるホトケメンバーたち。
あれだけの絆で結ばれていた彼らにいったい何があったのだろうか。


ナカムラ(×)「どないしたんや、ミツイ(×)。お前はエースの座をわし(×)からシャク(○)に移すほど、シャク(○)を信頼してたんやないんか?」


ミツイ(×)「わかってんのか?お前もこっち側の人間なんやぞ。よくそんな悠長なこと言ってられるな!」

ドイ(×)「そうですよ…。これは僕たちにとって最も重要なことなんです。

そう、これは天下二分の大戦争



『バレンタイン聖戦 in ホトケ』



なんですよ!」






一年で唯一、男という性別内で圧倒的な格差が生まれるこのイベント。


ミツイ(×)率いる
「断じてチョコに 目を向けない 男の集団」
略して「ダメ男(お)」チームと、


シャク(○)率いる
「いい思い出を胸に秘め 軽快なステップを踏む 男の集団」
略して「イケ男(メン)」チームの


一大決戦がいままさに始まろうとしているのである。


ナカムラ(×)「そういうことやったらわしも参戦や!!お前らにばっかりええ思いはさせんでぇ〜!」

ハラダ(○)「あんたらがええ思いできんのは自分らの責任っちゃ。まぁ、家で一人きりで反省しなさいよ。」


口論はヒートアップしていき、場はまさに一触即発の状態。
そして、お互いの我慢が限界に達しようとしたその時!!


???「こんな時は野球で勝負や!!」


一同「お、お前は!!」







フナコシ(汚物)「俺たちは野球サークルのメンバーや。互いの意見が食い違った時は野球で決着をつける。俺たちはそうして成長してきたはずだ、そしてこれからもな。」


ウツノミヤ(×)「さすが我らが盟主フナコシ(汚物)さんや!その奇抜な顔面と、気色悪いしゃべり方は気に食わんけど、納得の提案やで!
うばしゃぁぁぁぁあああーー!!」


こうして、一大決戦は幕を開けた…。


チョコレートをもらうのか、もらわないのか。


ホトケに女は要るのか、要らないのか。


30年にわたるホトケの歴史の中で、いまだかつて誰も解くことのできなかったこの問題に、遂に答えが示されるのである!




シャク(○)「さぁ、かかってくるがいい。俺の剛速球をバットに当てることができるのならな。」


ミツイ(×)「ここは俺がいこう。独り身歴20年。ひとりぼっちで成人を迎えたことの偉大さを教えてやろう。」





シュバーーーン






カキーーーーン





イケ男一同「なにぃーーーーーッ!!」


打球はバックスクリーンへ一直線。

歓喜に満ちる『ダメ男』ベンチ。
茫然自失の『イケ男』チームリーダーのシャク。



ミツイ(×)「帝王は唯我独尊でなければならない。女にうつつを抜かす者は王たりえないのだよ。」



マウラ(×)・モリ(×)「今が攻め時だぁ!やっちまえーーーー!」

カシワギ(×)「リア充は爆ぜろーーーーッ!!」

サトウ(×)「3次元で満足してるクズ野郎がよォォーーーッ!」


勢いに乗る『ダメ男』チーム。
日々の不満をこれでもかとぶつける!





フナコシ(汚物)「これはすごい猛攻だーーー!この一方的な展開は、1回裏の時点で5対0って感じだーーー!!」



ドイ(×)「チョコレートなんてお子様の食いもんなんだよぉ!それでも大学生かコラァ!!」

イケダ(×)「性欲を一人で処理できない下衆どもが!一日中腰振ってろボケェ!!」


痛烈な打球が次々と守備陣に襲い掛かる。



ニシオカ(○)「お前ら、それが単なる嫉妬だっていいかげん気付くんだ!」


ウツノミヤ(×)「うばしゃぁああああーーーー!」(※言葉が通じていない!)




絶体絶命、這う這うの体、為すすべのない大ピンチの『イケ男』チーム。

しかし、この男たちの登場で状況は一変する!!




キムラ(○)「お前ら知ってんのか…?女の子って、近くにいるといい匂いがするんだぜぇェェェェーーッ!そんな経験、お前らにねえくせによぉ!」


颯爽と登場するキムラ。しかしこの男、今はフリーのはず…。一体なぜ……?


キムラ(○)「確かに今、俺は独り身だ。だがなぁ、俺はこの20年間、女に事欠いたことはねぇんだよ!したがってこちら側にいて当然だ!!」





さらに、この男も!!



オイジ(◎)「チョコを彼女にもらえないなら、嫁にもらえばいいじゃない。」


あまりにも敗者への思いやりを欠いたその言動は、かつてのマリー・アントワネット(○)を彷彿とさせる。



強力な助っ人の登場により、活気を取り戻す『イケ男』チーム。


ハラダ(○)「未だに『女性の手料理=お母さん』ですかぁー!?」

ニシオカ(○)「てめぇらみたいな奴はパソコンの液晶にでもキスしてろ!!」

シャク(○)「お前らがいつまでたってもわかろうとしないなら、俺が無理矢理わからせてやる。くらえ!北海道直送・冷凍ビーム!!!」



悪意に満ちた暴言が、容赦なく相手に襲い掛かる。



フナコシ(汚物)「これはキムラとオイジのファインプレーにより、相手の猛攻をしのぎきり、その流れのまま打線が爆発だー!!4回表の時点で5対5って感じだー!!試合が振り出しに戻ったぞーー!!」




互いに一歩も譲らない壮絶な乱打戦。
一進一退の攻防が続き、両者ともに疲労の色が濃くなっていくも、結局はただの水かけ論。
試合を決める一手が、どちらのチームにもなかった。



やはりこの戦いに終焉は訪れないのだろうか。
しかし彼らは気付いていなかった・・・。この問題に関して、
怪物の名を冠するのはミツイ(×)ではなくこの男であるということに・・・



モリ(×)「み、みんな!あれを見るんだ!か、体が光っているぞ!!」






ナカムラ(バツ2)「わしもこないなことになるとは思わなんだ。まさか40年も経つとはのぅ・・・」



ご存じだろうか?世の中には独り身のまま30歳を超えると魔法が使えるようになるという都市伝説があることを。
まさに彼こそがその魔法使いなのだ。性欲界のハリー・ポッター!!




ナカムラ(バツ2)「立ち上がれ、童貞どもよ!!!捨て去った精子の分だけ強くなるのだ!」





ドピューーーーーーン!!





精子のご加護を受けた童貞たちはみるみるうちに勃ち上がる


サトウ(×)「自らのバットを一心不乱に磨き続けた幾千もの夜を思い出せ。女どものやわな手では鍛えられるものも鍛えられんわ!」

マウラ(×)「女なんてAVだけで十分です。わずらわしい人間関係というハンデを背負って大変ですね。」


さらに『ダメ男』チームはたたみかけるように攻撃する。


カシワギ(×)「おい、マキノ、ヤマグチ、フルタ、いつまでもバックネット裏で眺めてんじゃねえ!お前らもこっち側の人間なんだよ。」



マキノ(×)「リア充ばーか」

ヤマグチ(×)「お前のかーちゃんでべそ」

フルタ(×)「ガオー、ガオ、ガオー」







フナコシ(汚物)「新戦力はあてにならないがここにきて凄まじいダメ押しだー。6回裏の時点で8対5ってかんじだー」




ついに最終回
しかし彼らに反撃の余力は残っていなかった
やはりホトケは女人禁制の伝統を受け継いでいくのだろうか…





イケ男一同(○)「ここまでか・・」





キラリーーーーン 



キャピキャピ 



キュルルーーーーーン





女の子たち(♡)「そんなとこでバカやってないで、一緒にチョコ食べようよーー♡」




ミツイ(×)「あ、あれは!?
北海道直送なあの子と、
女王様なあの子と、
豪快なバッティングなあの子と、
カモネギなあの子と、
エリじゃないか!!!!」






萌え萌えキュン♡






イケ男一同(○)「待ってたぜ、マイハニー♡」





フナコシ(汚物)「なんとこれは! パワプロでいうメンタルシステム絶好調だーーー。」




シャク(○)「俺たちとお前たちの違いを教えてやろうか・・。
それはな、女の子に後ろから抱きついて逮捕されるかされないかだ。」


ニシオカ(○)「お前らはこの光景を見てもうらやましくないとでも?
もしそうならさっさと去勢するするこったな。」


ハラダ(○)「あの子がいないともう生きていけないっちゃね。俺の体は『水:愛=7:3』でできているっちゃ。ラブだっちゃ」




この時澄み渡る御所にある音が響いた



ポキッ


それは心が折れる音だった




フナコシ(汚物)「これはまさに逆転満塁ホームラン。8対9で試合は7回裏へ。しかし、もはやもう誰もバットを握ることができません。」




ドイ(☓)「だめだ。どうしてもバットが握れない…。もう自分をごまかせない、そう俺たちは本能で奴らに勝てないことを知っているんだ!」




神聖なグラウンドでイチャイチャする『イケ男』たち。

それを尻目に這いつくばることしかできない『ダメ男』たち。



なぜ、これほどまでに天は彼らを見捨てるのだろうか。


幾多の戦争・差別・格差を乗り越えて人類が生み出した至高の概念、
「平等」は机上の空論だったのか。





いつしか御所には雨が降りしきっていた。

「相合傘」と「泥だらけの体」がいやがおうにも対比される。




しかし、その時。

天から一筋の光が差し込んだ。





???「もうやめたまえ、迷える子羊らよ。争う事は醜きかな。」


一同(○や☓)「あ、あなたは!?(やっぱりこのオチか!?)」





サキヤマ神(☆)「アダムとイヴの時代から、人の愛の美しさは不変。万物流転のこの世にして唯一の例外といってもよいものである。
男が女を愛し、女が男を愛するのは素晴らしき人間の性(さが)である。
だがそれは、愛する者がいないことを劣るとしているのでは決してないのだ。孤独の寂しさを知ってこそ、本当の愛を知るのである。

『会えない時間が愛育てるのさ』とTOKIOが歌っていたから間違いない。」





人間界では「じてんしゃ」と呼ばれるペガサスから颯爽と降り、サキヤマ神(☆)はそう語った。




もはや戦おうとするものはここにはいない。




シャク「そうだ。おごり高ぶることでは決して先へは進めない。
俺はシャクだ!シャク(○)なんかじゃない!」


ミツイ「俺たちも、これ以上劣等感を感じる必要なんてないんだ!
俺はミツイ(☓)じゃない!ミツイだ!」



バットを捨て、グラブを捨て、彼らはみな同じ一人の男だという事に気づいてその喜びを分かち合ったのである。



サキヤマ神(☆)「うむうむ。これでよい。みなが平等なホトケに戻った。そうだ、僕は一つ感心したことがあるんだ。それはね、フナコシ(汚物)くん、君だよ。君だけは決して人と争う事はなかったね。素晴らしいことだよ。」


フナコシ(汚物)「そ、そんな!もったいないお言葉です。わたくしのような者に…。」


サキヤマ神(☆)「だから君にご褒美をあげるよ。そうだ。君も平等にしてあげるってことだよ。たった今から、
君はフナコシ(汚物)なんかじゃない、れっきとしたフナコシ(汚物)だ!




……、あれ?




フナコシ(汚物)!!フナコシ(汚物)!!
フナコシーーーーッ(汚物ーーーーッ)




……どうやら僕の力でもこれだけは取れないみたいだ。
ではさらば!チリンチリン!!」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




これが僕が今朝見た夢。


起きた時、僕はなんだか不思議な気持ちになっていました。

その感情はとても崇高で、言葉ではなかなか表現するのが難しいんですが、


あえて言葉にするとするなら











「あ〜〜、女抱きてぇ〜〜〜〜。」










※この物語はフィクションですが、実在する人物・団体・事件とは

けっこう関係あったりします。





【著者】ニシオカダイキ

1991年生まれ。兵庫県出身。

2011年度電撃小説大賞・アマチュア部門大賞受賞。

現実と妄想の狭間を見事に描き切るそのスタイルで小説界に新風を巻き起こした風雲児。自身の所属する野球サークルのブログも担当しており、皮肉たっぷりのその文章で絶大な人気を誇る。過去の作品として『俺たちの奴隷がこんなに有能なわけがない』がある。また、『ピンクダークの少年』(岸辺露伴)、『疑探偵TRAP』(亜城木夢叶)のノベライズを担当した。



【アシスタント】


ドイユウキ 

1992年生まれ。島根県出身。

自称文学部。作家としては致命的な弱点である情緒の不安定さを活かし、作品に命を吹き込む。某野球サークルの裏ブログを担当したこともあるが、持病の肩痛のため、あまり長い執筆活動はできないらしい。



カシワギヒロタカ 

1992年生まれ。愛媛県出身。

ラノベ好きがこうじて作家へと転身した異色の経歴をもつ。ずば抜けた読書量と2次元へ対する愛は、他の作家にはできない豊かな感情表現を生み出す。わかりやすい文章が書けないという理系の運命(さだめ)を背負っている。