ジャスティス戦  『春のドイ祭り』

守備の甘いところへ打つのがコツだ。だから俺は場外へ打つ



ベーブ・ルース






ジャス「今日はホトケとの練習試合だ。いい試合になるといいな〜。」



意気揚々と、富小路グランドへと向かうジャス一同



暦の上では春が近づいてきたとはいえ、まだまだ冬の厳しい寒さが残る京都。



4月の京阪リーグ開幕に向けて、そろそろ始動すればいい…。



ジャス「俺ボール握るの久しぶりやわ〜。投げれるかな〜。」



このような考えから暢気ともいえるようなジャス一同



ピクニック気分でグランドに到着した彼らは、信じられない光景を目の当たりにする!!!





ミツイ「千本ノック開始や!いくぞニシオカ!うぉおおおおおお!!!」




キーン





キーン





キーン





ニシオカ「こいやおらぁああああ!!!!」




パシ



パシ



パシ





左右容赦なく放たれる打球を流れるように捌くニシオカ







モリ 「ロングティーいくで!!!うぉおおおお!!!」





バコーン






バコーン






バコーン






豪快なスイングで凄まじい打球を連発するモリ





ジャス「なにぃいいいいいいいい!?なんやねんこいつらの仕上がり!
順調やん!順調すぎるやん!もはや明日開幕でもええやん!」







……






とても昨日や今日野球を再開したとは思えない。



オフシーズンにも関わらず、完璧な状態で試合へ臨もうとするホトケ



こいつら高3の春でセンター9割の受験生かよ
小学校入学前に九九をマスターした幼稚園の年長組かよ。




調整段階とかそんなレベルじゃねえ。もはや完璧。完成している…。



驚愕の光景を前に、呆然と立ち尽くすジャス一同



モリ 「フッフッフ。俺たちの仕上がりに驚きのようですね。なぜ俺たちがこれだけ仕上がってるか教えてあげましょう。」




おもむろにユニフォームのポケットから手帳を取り出すモリ




モリ 「これが俺たちの2014年1月のスケジュールだ!!!」















ジャス「なにぃいいいいい!!!おまえら予定全部HOTOKE練習やん!しかもめんどいから途中からすげーダイナミックな使い方になってるやん!!!」




そこには一般大学生の手帳には間違いなく記されているであろう文言が何一つなかった。



バイト デート 合宿 スノボ 学校 飲み会 旅行




代わりに記されているのは、ただ一つの予定





H O T O K E 練習




予定なんてこれしかないだろ?


もはや書くまでもない。


コーラを飲めばゲップがでるのと同じくらい当たり前だろ?


そういわんばかりに記されているのは





H O T O K E 練習





そんな馬鹿な…。



おまえらただの野球サークルやろ?



なんで毎日野球しとるんや…。



なんやねんおまえらPL学園かい。大阪桐蔭かい。



だいたいモリは就活生やろ?



野球してて大丈夫なんかい。




モリ「確かに、真面目に就活だけに専念して、いい会社に就職するのも素晴らしいことかもしれない。
でも、俺にとっては、この仲間たちと一緒に野球する時間が何よりも大切なのさ。
だからこそ、俺は就活も野球も疎かにしねえ。どっちも両立してみせるぜ。」



就活野球戦士 モリの示した気高き覚悟。黄金の精神。



こいつらには勝てねえ…。



こいつらは命がけで野球してやがる…。



ホトケの尋常ならざる野球への情熱に脅えをなすジャス一同



圧倒的な練習量から確固たる自信に満ち溢れるホトケ一同




ホトケは2014年、その初陣で最高のパフォーマンスをみせつける!!!







ホトケは初回


厳しい冬の練習の成果を見せつけんとばかりに



カシワギ「うぉおおおおお!!!」



ミツイ 「どせぇええええ!!!」



イケダ 「とりゃぁあああ!!!(俺あんま練習いってないけど…)」



と3本のヒットに四死球を絡め、いきなり6点先取の猛攻。



ジャス「やべぇええ。やべぇええよ。こいつらどんだけバット振れてんねん…。」



ミツイ「フッフッフ。試合はまだ始まったばかり。もっと楽しませてもらうぜ。」




ホトケの破壊力に脅えるジャス




調子に乗って薄気味悪い笑いをうかべるミツイ…。




このまま完封して大量得点や!




圧勝の青写真を描いていたミツイ




しかし、この男、重大な事実を忘れていたのだった!!!





ミツイ「やべぇええ。やべぇええよ。




今日ピッチャーおらん…。」




ホトケ一同なにぃいいいいいい!?





ミツイはこのとき、小3夏の水泳大会を思いだしていた。



更衣室で胸をワクワクさせながらパンツを脱いだ時に気がついた。



あれ?俺、海パン忘れた…?



そそくさと脱いだパンツを履きなおして、見学者の席へ腰を下ろす。



楽しそうにプールで遊ぶ同級生を、死んだ魚の目で恨めし気に見つめた…。




俺はあの夏から、何一つ学んじゃいない…。



肝心な時に、重大なものを忘れてしまう…。





ミツイ「シャクは…?シャクはどうした…」




縋る思いで、シャクをさがすミツイ。





モリ 「シャクは今頃…」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その頃、2015年卒 就活戦士シャクヒデキは洋服の青山に来ていた。



就活戦士の戦闘服たるスーツを購入するためだ。



シャク「フッフッフ。身だしなみは社会人としての基本。最高のスーツを見つけてやるぜ。」



シャク 「おい!そこの若いの!余にスーツを!スーツを試着させい!」



圧倒的威圧感で店員に話しかけるシャク。




青山店員「はは!かしこまりました!」




青山店員が持ってきたスーツに袖を通すシャク。





シャク「ぬぅううぉおおお!小さい小さすぎるわ!!!」









ビリビリビリビリビリ










ブチーーーーーーーン























シャク「もっとデカいの!もっとデカいスーツをもってこい若造!!!」




青山店員「ひぃいいいい!いますぐもってきますから!今すぐ持ってきますから命だけは!
命だけはご勘弁を!!!」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



モリ「って感じで青山のリクルートスーツを片っ端から突き破っています!!!」




一同「なにぃいいいい!!!あいつ未だに自分のサイズにあったスーツを見つけられずにいるのか!!!」




大 正 義 シャク がいない…。




もうあかんわ。絶望や。





虚空を見つめる哀れなミツイに、意外な男が救いの手を差し伸べる!!!




???「お困りのようですね、ミツイの旦那。ここはひとつ、俺にまかしてみてはいかがでしょうか?」






いったい誰だ!?





その人物とは!?










ドイユウキ



チーム1影の薄い男、あまりの影の薄さに自動ドアが反応しないこともしばしば



カラーの証明写真がモノクロになっちまう覇気のなさ



そんな男がいったいなんのつもりで…?




カシワギ「おい!なにいってんだドイ!目を覚ませ!おまえにピッチャーなんかできるわけないやろ!帰れ!ドイビニでバイトしてこい!」




イケダ 「島根に帰れ!精子からやりなおせ!」



ドイの暴挙ともいえる言動に非難囂々(ごうごう)のホトケナイン




しかし、周囲から飛び交うヤジも、どこ吹く風とばかりにマウンドにあがるドイ





ドイ 「うるせえやつらだ…。すぐにだまらせてやるぜ…。」





ゆっくりと、ジャスの一番打者を相手に振りかぶるドイ





ドイ 「この球を投じた瞬間に始まるんだ!ドイ伝説が!!!







ギュルギュルギュル










ズバーーーーーーン









シュルルルルルル








ズバーーーーーン







3者連続三振







信じられない!!!







なんという男だ ドイユウキ







初先発のマウンドで圧巻のピッチング







マツバラ「なんなんですか!あの切れ味鋭い変化球は!?カーブですか?スライダーですか?」



ドイ  「ふっ…。カーブ?スライダー?そんな簡単なもんじゃねえ。
これは俺が生み出した全く新しい変化球 『ドイボール』だ!!!」










ドヤ顔で堂々と胸を張るドイ



しょんべんカーブに『ドイボール』というダサい名前をつけるドイ



いつもなら散々に罵倒されるはずだが、今は違う!



カッコイイ 最高にカッコイイ



抱いてくれ!!!



出会って3秒で合体してくれ!!!






その後も豪速球とキレのあるドイボールを武器に
なんと4回途中までパーフェクトピッチング!

最高の投球を披露する!




このドイの投球に燃え上がらないはずがない。




カシワギ 「この3か月、誰よりも必死で打撃練習に励んできた。俺が振ったところに必ずボールが来るはずなんだ!」




カキーーーーーーン





低めの難しいストレートを見事な流し打ち!






??? 「フッフッフ。俺も練習の成果をみせてやるぜ!!!」













誰や?こいつ?わからない…。



なんやったけ?




ヤノ?




ヤマグチ?









まあどっちでもええか




ヤマグチ「俺はヤマグチや!覚えといてくれ!」





カキーーーーーーン





自らの存在をアピールするヒットを放つ!




その後も、ミツイイケダのヒットや四死球を絡め大量10得点!



抜群の破壊力を見せつける!



また、守備でもニシオカヤマグチカシワギらの鉄壁の守備でドイを盛り立てる!




そして、いよいよ最終回ツーアウト




ドイ 「もうシャクなんていらねえ!俺が真のエースだ!!!





ズバーーーーーーーン





最後の打者を三振にしとめ、7回7奪三振1失点完投のナイスピッチング



ホトケは10−1でジャスに見事勝利したのであった。






今日の英雄



ドイ  (圧巻のピッチング)


カシワギ(4打数2安打。守っては好リードでドイを支えた。)








試合後、ドイをたたえる仲間たち




サキヤマ神 「DOI is the strongest in the world!!!」
      (訳 ドイは世界最強だ。)


モリ    「I want to be DOI.」
      (訳 俺はドイになりたい。)


ミツイ   「DOI is more beautiful than my mother!!!」
      (訳 ドイは俺のママより美しい。)




今なら「ホトケあるある」にあったあの伝説が信じられる。













ドイ「世界中の女は俺のモノさ。」







10−1。


まさに『圧勝』と言うにふさわしい内容で勝利したホトケ


しかし、彼らの野球への情熱が尽きることはない。


ミツイ 「俺たちはただ勝つために野球をしてるんじゃない。
ホトケでやる野球が大好きで、楽しくてたまらないんだ。
こんな楽しいことを一日たりとも休めるかよ。」


ニシオカ「俺たちの練習が終わるのは、体力がなくなったときでも日が暮れたときでもなく、心の目ですらボールを捉えられなくなったときだ。」



ホトケの挑戦はまだまだ続く!!!